色鉛筆画の描き方|動物の全身を描く

色鉛筆は細かい作業が得意ですが、
絵の具と違って一度に広い面を塗ることができません。
とくに被毛に覆われた動物の全体像を描くときは、
細かさに気を取られてバランスを崩しやすくなります。

ベルジアンシェパードドッグ タービュレン


【輪郭をとる】
動物を描く場合、全体の輪郭は「毛先が終わる位置」の印。
形を見失わない程度に、一番外側をとると良いと思います。

なぜなら、
ハッキリ見えているところで輪郭を取ると、
思ったより小さくなってしまいます。
しかも
毛の長さを意識するうちに
毛先が体の部分ごとに
輪郭の外へ出たり
引っ込んだりして形が崩れる。

そんなことを防ぐためでもあります。
毛先は輪郭上まで!
そう決めておけば、
没頭し過ぎて全体を崩さずにすみます。


【描き込み】
まず
どこから描き始めましょうか?

動物の全体を描く場合、
一番奥から描き始めるのが安全な方法です。
この絵の場合は腰から臀部です。

動物の毛並みは
前から後ろへ向かっていて
少しずつ上へ重なっています。
手前からぐいぐい描き始めると
前身と後身の境目が曖昧になる。
または
前身と後身の遠近感が無くなる
可能性があるからです。

肖像画なので
フォーカスされるのは顔や目線ですが
いきなり顔を描き込むと
全体からズレる可能性があります。
そのときは
残念ながら修復不能(泣)

奥から描き始めて、
どの部分も同じ描き込み具合で進めましょう。
奥は一番遠いので、遠近感のために
前身ほど描き込む必要はありません。



 

【目はいつ入れる?】
”当選だるま”や
仏像開眼のイメージがあるからか
「目は最後ですよね」
と確認されることが
まーまーあります(笑)

でも基本は全体と合わせて
早い段階から描き始めますが
目の位置・大きさを確定できたら、
大きさを調整できる余白を残しつつ
あくまでも「全体と同じ描き込み」で進めることが大切です。

たとえば、
まわりを描き込んでから目を入れようとすると
眼球が小さくなったり
一体感が欠けたりします。
逆に、
先に目を入れてしまうと
輪郭にズレが出たときの修復が困難です。

瞼や瞳の輝きは
色鉛筆の先を細くして、点で描くイメージで丁寧にくっきり描きます。

【全体の調整】
この絵の場合、
依頼主の写真を見て描いていますが
骨格・バランスも写真通りなのに
後ろ足が引け腰に見えます。
これは、
背景をつけないので
写真で見ている背景と
被毛の境目が違ってくるからです。
それを補うために
加筆する分の輪郭を加えました。

「消しゴム」も重要な画材の一つ。
絵を描くときは
間違いをリセットするだけでなく
”減らす” ”光らせる”ための道具
と思って使うと
自然と表現が違ってきます。

お尻あたりに自然な輝きと
むっちりした丸みをつくるために
色を落として光加減を加えました。

【仕上げ】
立体感の調整をします。
ここまででも数回していますが、
最後に一体感を持たせるために
部分ごとの影を調整します。

たとえば
舌の影、顔の影、腹の影です。
影が薄ければ軽い印象、
濃ければ重い印象になり
絵の印象は、
影の陰影具合で決まります。
そして
耳・目・鼻・舌の小さな部分を
しっかり描き起こして完成です。



仕上りのテイストは絵描きによって違っていて
私自身は、写実でありながら絵画的な要素を加えて仕上げたいと思っています。
骨格が正しく整っていることはもちろん、
被毛の手触り、
目に溢れる信頼感、
等の表現は繊細で丁寧に。
絵のポーズで固まっているのではなく、動きだしそうに感じる。
感覚的な表現は技術も必要ですが
実は、心で念じながら描くこともコツの一つです(笑)
ホントです!






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